世界のバーチャル・ウォーターのフロー

昨年の研究の一環として、世界のバーチャル・ウォーター(仮想水)の貿易フロー(純輸出量)を推計した(オリジナルの画像ファイルはこちら)。

世界最大のバーチャル・ウォーターの供給源は、中南米と東南アジアである。両地域ともに、純輸出量が多いだけでなく、ほぼ世界全域にバーチャル・ウォーターを供給している。特に中南米からヨーロッパへの純輸出は極めて大きく、地域間では世界最大のバーチャル・ウォーター貿易フローである。

これらの地域に次いで純輸出が大きいのは北アメリカだが、供給先はヨーロッパ、西アジア・中東・北アフリカ、日本に集中している。また、東アジアとサブサハラ地域からの輸出はヨーロッパに集中している。

輸入側から見ると、地域単位ではヨーロッパが世界最大のバーチャル・ウォーター需要者であり、日本と西アジア・中東・北アフリカを除き全地域から輸入している。ただし、人口2000万人以上の国別で見ると、日本が世界最大のバーチャル・ウォーター輸入国である。日本は、自分の消費のために直接・間接に必要な水の9割程度を外国に頼っている。

なお、最近増加しているのは中南米から東アジアへのフローで、ブラジルやアルゼンチンから中国への輸出を指している。恐らくその大半が大豆の生産に使う水で、食用油の搾油に使うものと思われる。世界の水を動かしているのは、中華料理用の油だったりするのである。

分析結果や分析方法の詳細は、拙著『水資源の国際経済学――気候・人口問題と水利用のネットワーク化』を参照されたい。

 

(図の見方)
矢印は、水が実際に使われた場所と、最終的に財の消費が行われた場所をつないでいる。たとえば、インドで綿花の栽培に水が使われ、収穫された綿花がベトナムに輸出されて繊維となり、ベトナムの工場で縫製された服が日本に輸出され、最終的に日本の消費者がその服を買った場合、矢印はインドから日本に直接つながっている。


※ バーチャル・ウォーター(仮想水)とは、財やサービスの生産のために直接・間接に使われた水の量を表す。間接的な利用というのは、その製品自体を作るのに使った水ではなく、部品の製造過程、あるいはそのまた部品の製造過程・・・と、製造のプロセス(サプライチェーン)の上流での水利用を指す。また、今回の推計では、農畜産物の一次産品で使われた水を対象にしている。ここで“使われた”というのは、単に水を川などから組み上げた(取水した)ということではなく、その水が植物の成育過程で吸収されて葉から蒸発したり(蒸散という)、田畑の表面から蒸発したりした場合、つまり、液体の水として下流などで再利用ができない状況で使われた場合を指している。