『水資源の国際経済学——気候・人口問題と水利用のネットワーク化』の出版

本日、拙著『水資源の国際経済学ーー気候・人口問題と水利用のネットワーク化』が公刊されました。

“水”は、今世紀最大の課題の一つです。

 20世紀の人口増加は水資源が豊富な地域で生じたのに対し、
21世紀の人口増加はそうでない地域で生じる

この単純な事実が、“緑の革命”に大幅な見直しを迫るとともに、各地で深刻な森林破壊や食料不足を引き起こす恐れがあります。また、多くの紛争の背後に、実は水をめぐる摩擦があります。

本書の目的は、人口増加と気候変動の時代に対応した水利用のあり方を経済学的な視点から考察し、水に起因する21世紀の食料と環境の問題について、解決の方向性を示すことです。

その一つが、離れた国や地域に存在する多様な水資源をネットワーク化する新たな理論と、その延長にある“バーチャル・ベイスン(仮想流域)”の概念です。

本書では、この新たな理論を通じて、
・ローカルな多様性とグローバルなレジリエンスの好循環
・力に対して力で挑むのではなく、関係性の組み替えによって柔軟に適応していくような、地球システムとのしなやかな付き合い方
を提示しています。

本書のアイディアが、100億人が地球上に暮らす未曾有の時代をデザインする上でのヒントとなることを願っています。

多くの皆様にご笑覧頂ければ幸いです。

 

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主な内容

目次
はじめに

第1章 地球の水循環と水資源の多様性
1 はじめに
2 地球の水循環
3 水資源の賦存量の多様性
4 水資源の賦存形態の多様性

第2章 食料生産における多様性への対応―― 人口増加と気候変動に伴う構造変化
1 はじめに
2 20世紀の食料生産と水資源
3 水資源の地理的な需給不均衡の拡大
4 グリーン・ウォーターへの依存の増大

第3章 食料貿易を通じた多様性への対応(1)―― バーチャル・ウォーター貿易の理論
1 はじめに
2 バーチャル・ウォーターの概念
3 バーチャル・ウォーター貿易の基本命題(1) ―― 2国のケース
4 バーチャル・ウォーター貿易の基本命題(2)―― 3国以上のケース

第4章 食料貿易を通じた多様性への対応(2)―― バーチャル・ウォーター貿易の有効性
1 はじめに
2 バーチャル・ウォーター貿易と水希少性の関係についての先行研究の評価
3 国際貿易に体化した環境負荷の各種推計手法
4 多地域間産業連関モデルを用いたバーチャル・ウォーターの推計
5 バーチャル・ウォーター貿易と水希少性
6 南北格差とグローバルな環境制約

第5章 地域内連結利用と地域間連結利用
1 はじめに
2 地域内連結利用の機能
3 地域内連結利用の理論(1) ―― 静学モデル
4 地域内連結利用の理論(2) ―― 動学モデル

第6章 地域間連結利用の理論(1) ―― フロー型×フロー型
1 はじめに
2 閉鎖経済均衡と開放経済均衡
3 安定化機能の評価
4 フロー型×フロー型地域間連結利用のメカニズムと適応特化

第7章 地域間連結利用の理論(2) ―― ストック型×フロー型
1 はじめに
2 静学モデル
3 動学モデル
4 ストック型×フロー型地域間連結利用のメカニズムと平準化

第8章 現実の制約下における地域間連結利用
1 はじめに
2 ここまでの結論
3 政策措置の全体像と連結利用協定
4 主体間の情報伝達と調節
5 可変性・冗長性の評価と補償スキーム
6 オープンアクセス問題
7 地域間連結利用の可能性

付録
参考文献