水をめぐる競争

「あの湖の水を農業に使えれば」

案内してくれた住民はそう嘆いた。

遥かかなたに見えるのは、パンガニ川流域随一のダム湖、ニュンバ・ヤ・ムング。スワヒリ語で「神の家」。

現在は、若干の漁業と家畜の飲み水以外は、ダルエスサラームなど都市部向けの発電用のみに使われている。

農業用水、家庭用水、工業用水、発電用水、そして生態系の維持に必要な水との間の水を巡る競合は年々激しさを増している。

ムワンガの町で、案内してくれた住民の方に、「干ばつの時はどうするのか」と尋ねた。

「まずは飲み水と家畜の水の確保だ。そして懸命に考える。家畜に子があれば売ることもできる。あるいは近隣や遠くの街で一時の仕事を探す。木を切って炭にして売る人、土を焼いてレンガを売る人もいる。ここでの暮らしは厳しい。能力が必要だ。」

灌漑ができる僅かな地域を除き、ほとんどの農地は雨季の降雨に依存する天水農業。しかし、降雨量は極めて不安定で、かつ、気候変動によって不安定さは増すばかりだ。

炭のために木を切れば、山の保水力や土壌保持力が失われることは彼らも知っている。しかし収入がなくなれば選択肢はない。実際、人口増加によって炭の需要は増えており、至る所に禿山が見られる。

場所: Mwanga, Kilimanjaro, Tanzania