東林院と沙羅の花
東林院は、臨済宗妙心寺の塔頭の一つ。
通称「沙羅双樹の寺」と呼ばれ、庭園の沙羅林で知られる。
かつては樹齢300年を超える沙羅の古木が植えられ、花が咲く頃には、開祖である山名豊国を忍んで歌会や句会が催されていた。環境の変化により古木が平成18年に枯死してからは、古木の種子から育てた若木を移植し、十数本の沙羅林として生まれ変わった。
通常は宿坊として以外は非公開だが、毎年この季節に「沙羅の花を愛でる会」として特別公開される。
まずはお茶を一服いただきながら、本庭の沙羅を楽しむ。
茶菓子も沙羅の花と葉をかたどったもの。
お寺の方によると、沙羅の花は雨が降らないと咲かず、咲いたらたった1日で落ちてしまうとのこと。
しかも落ちた花びらはすぐに黒ずんでしまう。
幸いなことに、昨日からの雨のため、今日はたくさんの落ち花が見られた。
ちなみに、仏教の聖樹としての沙羅双樹は別の植物。
沙羅双樹は寒さに弱いため、日本の寺院ではかわりに沙羅樹を植えてきた。
沙羅樹の別名はナツツバキで、落ちたその様はまさに椿の趣。
一通り沙羅の花を楽しんだら、奥の書院にて精進料理を頂く。
ここでも沙羅の花を模した美しい一皿。
中庭には季節外れの赤い万両の実が。
雨に濡れた木々や葉がキラキラして美しい。
ふと遠くの沙羅の葉を見ると、一匹の蝶が羽を休めていた。
しっとりとした沙羅の落ち花の傍ら、
まるで時が止まったかのよう。
東林院を出ると、一気に雨脚が強まった。
門の外には、季節を終えようとしている紫陽花たち。
もうすぐ京にも夏がやってくる。