Who will control the Green Economy?

今年6月にリオで開催される国連持続可能な開発会議(リオ+20)では、テーマの一つとしてグリーンエコノミーが議論される。グリーンエコノミーについては、僭越ながら、私も『日経エコロジー』で小さな連載を持っているので、よろしければご参照されたい。

このグリーンエコノミーについて、ETC Groupというアメリカに拠点を置く国際NGOが、「Who will control the Green Economy?」(誰がグリーンエコノミーをコントロールするのか?)というレポートを公表した。グリーンエコノミーについての市民社会側の見方の一つとして 興味深いので、以下に概要を紹介する。

2012年6月の地球サミット(リオ+20)では、“グリーンエコノミー”を可能にする“大いなるグリーンテクノロジーの形成”という考えが、私たちの惑星の生存の鍵として広く促進されつつある。この考えのポイントは、石油の収奪に替わって、バイオマス(食料や繊維作物、牧草、森林の残留物、植物油、藻類など)の収奪を行うということである。発案者たちが描くのは、ポスト石油の未来――すなわち、(プラスチック、化学製品、燃料、薬品、エネルギーなどの)工業生産が、化石燃料ではなく、ハイテク・バイオエンジニアリングのプラットフォームによって変形させた生物学的原材料に依存する未来なのである。世界の巨大企業と強力な政府の多くが、遺伝子工学、ナノテクノロジー、構成的生物学(synthetic biology)などの最新技術を利用することで、バイオマスを高付加価値製品に変換することを喧伝している。

陸水バイオマスの宝庫は南側諸国に位置しており、それらに頼って暮らしている小規模農家や牧畜家、漁民、森林生活者によって護られている。ETC Groupは、バイオエコノミーがさらなる企業パワーを結集し、過去500年で最大の資源略奪をもくろんでいることを警告する。企業の“バイオマスター”は、かつてないほどの規模で自然を商品化し、生物多様性を破壊し、少数民族を追放する構えである。

バイオマス(とそれを変形させるテクノロジー・プラットフォーム)の確保への探求は、企業同盟を駆り立て、企業パワーの新たな星座(訳者注:このレポートでは、こうした企業同盟を星座に例えている)を作り出している。その主要プレーヤーは、ビッグエネルギー(エクソン、BP、シェブロン、シェル、トータル)、ビッグ製薬(ロシュ、メルク)、ビッグ食品・農業(ユニリーバ、カーギル、デュポン、モンサント、ブンゲ、P&G)、ビッグ化学(ダウ、デュポン、BASF)、巨大軍隊(アメリカ軍)などである。

気候の混沌、金融と生態系のメルトダウン、そして貧困の蔓延に直面して、リオ+20に向けて準備を進める各国政府は、 政治的に都合のよいプランBを約束する、(それが何色のものであれ)技術の転換を受け入れることに熱心である。しかし、ビジネス・アズ・ユージュアルを選択するべきでないとするなら、ガバメント・アズ・ユージュアルも選択するべきではない。現在世代と将来世代のためにこの星のシステムの高潔さを守るために必要なのは、新たな、より社会的・生態学的に持続可能な経済モデルである。信頼できる革新的な反トラスト・メカニズム(それは未だ存在しない)を作り出し、企業パワーを制御しなければならない。国際社会の政策決定者は、食料安全保障、農業、気候問題といった課題に対処する包括的枠組みとして食料主権を位置付けることで、これらの課題の政策の間にある断絶を乗り越えるべきである。すべての交渉は、社会運動と市民社会の強力な参加の下に進められるべきである。政府の断固とした行動と新たなガバナンス構造の創造がなければ、グリーンエコノミー(Green Economy)は強欲エコノミー(Greed Economy)を生きながらえさせるだけだろう。

ETC Groupの見解にすべて頷けるわけではないが、その戦略は見事である。特に、バイオマスの収奪と 石油の収奪、グリーンエコノミー(Green Economy)と強欲エコノミー(Greed Economy)を対置させたユニークな言い回しは、真実は別にしてもかなりの説得力がある。

レポートの中で述べられている通り、ETC Groupの目的はグリーンエコノミー自体を否定することではない。また、技術の重要性自体を否定しているわけではない。レポートは、環境一般の議論の中に埋もれがちな食料と農業の重要性、特に小規模生産者の役割こそが、グリーンエコノミーに関する議論の中心に据えられるべきであるとしている。

彼らが警戒しているのは、グローバル企業による食料市場の独占と、技術の暴走である。特に、まだ十分に検証されていない大企業占有の“グリーン”な技術が、その影響に対する準備ができていないコミュニティに流入し、小規模生産者や少数民族を駆逐するとともに、企業支配が強まることを警戒している。

こうした状況に対処するため、レポートは、“食料への権利”に関する国連の特別調査委員(Special Rapporteur on the Right to Food)のオリビエ・デシューター(Olivier De Schutter)氏が提案する反トラスト法制の強化を求めるとともに、人々が自らの国の食料・農業政策を民主的に決める食料主権(food sovereignty)の重要性を訴えている。

また、技術については、技術の評価と情報共有のための国際的なメカニズムの確立を提案している。

リオに集う各国政府は、予防原則に基づき技術の評価と情報共有を行う国際的なメカニズムを立ち上げるプロセスを採択すべきである。このメカニズムは、国家主権を強化するとともに、バイオテクノロジー・ナノテクノロジー・構成的生物学などの新興技術が健康・環境・経済・社会にもたらす影響の評価に関する南側諸国の能力を強化する。ジオエンジニアリングなど、一方的に展開され、気候に影響を与えることを意図した新興技術は、こうしたメカニズムなしに進められるべきではない。

(参考リンク)

ETC Groupウェブサイト: http://www.etcgroup.org/
レポート”Who will control the Green Economy?”:http://www.etcgroup.org/en/node/5296/

(イメージ画像)

ETC Groupレポート「Who will control the Green Economy?」表紙より